先日、僕は久しぶりに実家のある埼玉県に帰省した。そして、近所のスーパーで買い物をしていた時、ある値札の前で思わず足が止まった。「国産豚こま肉 100g 68円」。
なんの変哲もない、地元ではごく当たり前の光景。だが、今の僕にとって、それはファンタジーの世界の産物かのように、非現実的な数字に見えた。
現在、僕が住んでいるのは東京。職場がそこにあるからだ。東京のスーパーでは、特売日ですら豚肉が100gあたり100円を切ることは稀で、普段は128円や148円の値札が当たり前のように貼られている。その差、実に2倍以上。
脳内で電卓を弾くまでもない。この圧倒的な価格差を前に、僕は静かに絶望していた。そう、これこそが僕が日々直面している現実。改めて突きつけられた「東京の物価」という、あまりにも高く、分厚い壁の正体だった。
「すき家」にすら存在する、見えない都県境(東京価格)
多くの人が「チェーン店なら価格は全国一律だろう」と思っているかもしれない。僕もそうだった。だが、その幻想は東京に来てすぐに打ち砕かれた。
牛丼チェーンの「すき家」ですら、東京の店舗は「東京価格」が設定されており、地方の店舗よりも数十円高いのだ。たかが数十円、されど数十円。日々利用する者にとっては、ボディブローのようにじわじわと効いてくる。
もちろん、スーパーの価格も、飲食店の価格も、僕らが日常で手にするものすべてが、見えない膜に覆われるように一様に高い。「地元ならもっと安く、もっと食費を抑えられるのに。苦しい」。この心の声は、きっと僕だけのものではないはずだ。
東京で暮らし始めてから、僕の食生活は劇的に変わった。いや、変えざるを得なかった。
「お米?高いから、今は食べるのを控えてるんです」
友人にそう自嘲気味に話したことがある。冗談ではない。本当に、白米を食べる回数は激減した。今の僕の主食は、安価な乾麺のパスタだ。様々なソースでごまかしながら、来る日も来る日もパスタを茹でる。その結果、どうなったか。
このパスタ生活を約5ヶ月続けた結果、僕の体重は10kg落ちた。
意図せざるダイエット。聞こえはいいかもしれないが、健康的な痩せ方でないことは自分が一番よく分かっている。これは、東京の物価の高さが、僕の身体を蝕んでいる証拠に他ならない。
家賃6.7畳、飲み会3000円。これが僕のリアル
東京の生活コストで最も重くのしかかるのが「家賃」だ。僕が住んでいるのは、6.7畳の1K。決して広くはないこの城を維持するだけで、毎月の給料のかなりの部分が消えていく。「ぎりぎり」という表現が、まさにぴったりだ。
もちろん、生活は家賃だけで成り立たない。
- 飲み会:仲間との交流も大切だが、一度参加すれば3000円は覚悟。少し良い店なら5000円が飛んでいく。
- 交通費:幸い、定期があるので多少は安くなるが、定期区間外への移動は躊躇してしまう。
- 美容院:価格は地元と大きくは変わらない。それでも「もう少し安くならないかな」と毎月思う。贅沢は、できない。
「みんな同じだよ」。飲み会で物価の話になると、決まって誰かがそう言う。そうだ、僕だけじゃない。東京で夢を追い、仕事に励む誰もが、この重圧の中で必死にもがいているのだ。
それでも僕が「東京」にいる理由
「こんなに苦しいなら、実家に帰ればいいじゃないか」と、思う瞬間がないわけではない。それでも僕が東京に留まるのには、いくつか理由がある。
一つは、仕事がここにあるから。僕がやりたい仕事、キャリアを積める環境は、やはり東京に集中している。
そして、もう一つ、少し個人的な理由だが、「ポケモンGOが充実してできる」ことだ。ポケストップの数、レイドバトルの成立率、コミュニティの熱量。こればかりは、地方では決して味わえない魅力がある。
それに、高いと嘆いてばかりでもない。個人商店が営む八百屋や、特定のコンビニ、アーケードの特売など、探せば安いものが見つかることもある。この街で生き抜くための知恵も、少しずつ身についてきた。
東京で暮らす価値があるのか、ないのか。その答えは、まだ僕にも分からない。今はただ、この街でしか得られないもののために、日々戦っている。
これから「上京」する君へ、僕からのアドバイス
最後に、これから東京での生活を考えている君へ、僕自身の経験からいくつか伝えたいことがある。
- まず、お金を蓄えてきてほしい。初期費用はもちろん、最初の数ヶ月を乗り切るための生活防衛資金は、君の心のセーフティネットになる。
- 家選びは妥協しないでほしい。家は心と体を休める唯一の場所だ。できれば、少しでも過ごしやすいアパートやマンションを選んだほうがいい。
- 「東京寄りの埼玉」も視野に入れてみてほしい。朝に強く、多少の通勤時間が苦にならないなら、中心部から少し離れるだけで家賃はぐっと抑えられる。暮らしのコストパフォーマンスは、確実に上がるはずだ。
東京は、夢を叶える場所であると同時に、容赦なく現実を突きつけてくる場所でもある。苦しいことは多い。だが、それでも挑戦する価値のある街だと、僕は信じている。
